コラム
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外来に来られる患者さんで便秘に悩んでいる方はとても多いです。便秘は若いころは女性に多いのですが、加齢により男性の比率が増加し、70歳以上では男女ともにおよそ10人に一人は便秘があるとされています。たかが便秘で医療機関にかかるなんて・・・と思われるかもしれませんが、便秘を長引かせることにより巨大結腸症や腸閉塞の原因になって重症化することがあり、注意が必要です。また、便秘には食生活やストレスなどさまざまな要因が関係していることが多いのですが、中には大腸がんなどの病気が隠れていることがあり、場合によっては詳しい検査が必要となります。
いったん便秘になり排便できない状態が続くと、腸の中で便が固くなってさらに便秘を悪化させてしまうため、日頃から腸の働きを良くして便秘を予防することが重要です。では、便秘を予防するためにはどのようなことに気をつけたらいいでしょうか?
毎日朝食をとることで腸の動きを活性化させ、排便につながります。
食物繊維を多く含む食品として穀類(米、パン、とうもろこしなど)、野菜、果物、芋類、豆類があります。納豆などの発酵食品も便秘の予防効果があります。ただし、腹部膨満感(お腹が張る感じ)が強い方は、症状が悪化することもありますので、食べすぎに注意して下さい。
水分が少ないと便が固くなり、排便しにくくなります。こまめに十分な水分をとりましょう。
体を動かすことが腸を動かすことにもつながります。ウォーキングなどの運動を毎日しっかり行いましょう。
ストレスが多い状況では交感神経が過剰に働いて便秘になりやすくなります。なるべく気分転換をしてストレスを減らし、ゆったりとした気持ちですごしましょう。
以上のことに気をつけて、それでも便秘がなかなか改善しない場合には、薬物治療の選択肢があります。内科外来で一般的に処方される便秘の治療薬を紹介します。
生活習慣で改善しない便秘に対してまず処方されることが多い下剤です。便を柔らかくさせ、排便しやすくする効果があります。商品名では酸化マグネシウム、マグミット®、アミティーザ®などがあります。即効性はないため、効果が出るまで数日かかります。どちらかというと腸にやさしい作用で長期にも服用できますが、特に高齢者では高マグネシウム血症になることがあり、注意が必要です。
腸を刺激して排便を促す作用がある下剤です。商品名ではプルゼニド®、アローゼン®、ラキソベロン®などがあります。なお、市販の下剤の多くはセンナなどの成分を含んだ刺激性下剤です。効果が強い一方で、習慣性があるため、長期間にわたり漫然と服用しないように注意が必要です。
飲み薬で便秘が改善しない場合や一時的に便が詰まってしまった場合に坐薬や浣腸が使われることがあります。即効性があり、寝たきりの要介護者などにも有用ですが、一方で腸穿孔などのリスクや、急な排便の結果として気分不快や失神などの症状が出ることがあり、使用にあたっては十分な注意が必要です。
便秘に使われる漢方薬として大黄甘草湯、潤腸湯などがあります。また、いわゆる便秘の薬ではありませんが、腸の動きが低下していてお腹が張る感じや腹痛がある場合、大建中湯が処方されることがあります。