コラム
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暑くなってくると、心配なのが熱中症です。とくに暑くなりはじめのこの時期は、熱中症で体調を崩す方が増えてきます。一方で、最近テレビなどでは「水分と塩分の補給をしましょう」と注意喚起することが多く、そのため当院に来られる患者さんも塩分補給飲料や塩分補給あめなどを常用する方が増えているようです。でも、はたしてそこまでの塩分補給が必要でしょうか?とくに、日頃から「減塩をしましょう」と指導されている高血圧症の方であっても、夏の間は塩分補給をした方がいいのでしょうか?
確かに、暑くなって多量の汗をかくと、体から塩分やミネラルが失われてしまいます。ただし、これはあくまでもスポーツや野外活動など暑い環境で多量の汗をかいた場合の話です。汗に含まれる塩分量はおおよそ0.3%ですので、1ℓの汗をかいた場合、約3gの塩分が失われることになります。しかし、そこまで多量の汗をかくことは、通常の生活ではまれでしょう。また、通常は食事で十分以上の塩分が取れているため、体の塩分が足りなくなることもありません。そもそも人体に必要な塩分量は一日1~1.5g程度とされています。それに対して、一般的な日本人では一日の塩分摂取量は10g以上であることが多く、日頃から必要量を大幅に超えた塩分摂取をしていると言っていいでしょう。暑いからといってさらに塩分補給をすれば塩分過多となり、高血圧の悪化につながります。したがって高血圧症の方の場合は、暑い時期であっても塩分制限が基本です。また、暑い環境で多量に汗をかくと塩分以外のさまざまなミネラルも失われてしまいます。できればそういった暑い環境は避け、涼しい場所で休憩を取るなどして多量の発汗を防いでいくことが望ましいです。暑い日中は屋外での活動はなるべく避けて、クーラーなども上手に利用しましょう。なお、水分補給はどんな場合にも重要です。暑い日はもちろんのこと、普段からしっかりと水分補給を行うように心がけましょう。